かねだクリニック

かねだクリニック 大阪市浪速区の内科,胃腸科,肛門科,外科

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健康雑学

(第16話)お掃除はお好き?

私の朝一番の仕事は、クリニックの掃除です。清潔感のある空間は居心地が良いということも毎朝かかさずに行う理由の一つですが、ホコリの多い空間には多数の病気の原因が隠れているからです。現代病の一つとなっているアレルギーの原因の多くは空気中に存在します。そして、風邪などの感染症の原因も空気中に存在します。病原体となるウイルスや細菌は、勝手にプカプカと空中を漂っているわけではなく、必ずホコリに付着して移動しているのです。掃除をすることが病気の予防にはとても大切なのです。
そして、私が掃除をするのにはもう一つの理由があります。
一昔前のニューヨークの地下鉄は、落書きだらけで怖いところというイメージがあり、実際に犯罪の多発地域でした。しかし、現在は日本の地下鉄と変わらない安全な場所になっています。みなさんは、犯罪撲滅のためにニューヨーク市交通局が何を行ったか知っていますか?パトロールや警備の強化でよくならなかった治安が、1984年から5年をかけてホームや車両の落書きをすべて消したところ、地下鉄内の凶悪犯罪が半減し、犯罪の温床の汚名を返上することになったのです。落書きの多い地域では、軽犯罪が多発し、凶悪犯罪が起こりやすくなる、すなわち、「自分だけではない」という意識から罪悪感が薄れ、大きな犯罪につながるという「ブロークンウインドウズ理論」に基づいた対策だったのです。きれいな空間にいると、誰もが無意識にその空間をきれいに使う。きれいな空間にいると、気持ちが落ち着く。気持ちが落ち着けばきれいに使う心のゆとりが生まれる。清潔な空間が維持できるといつでも病気にかかりにくい。このような良いスパイラルが発生します。私は、これからもずっと朝一番のクリニックの掃除を続けようと思っています。
「トイレの神様」を口ずさみながら。

 

(第15話)口臭

皆さんは自分の口の匂いが気になったことはありませんか。口臭があると胃腸が悪いとよく言われますね。本当にそうでしょうか。
人は誰でも多少なりとも口臭が存在します。ふつうは起床時に最も強く、食事の摂取で薄まります。長い時間何も食べなかったり、疲労が強い時に口臭は強くなることがわかっています。これを生理的口臭といい、口腔ケアで緩和することができます。それに対して、病的口臭という異常事態による口臭もあります。その原因の90%以上は、歯周病、多量の舌苔付着、唾液分泌量の減少(口腔乾燥症)、虫歯、義歯の清掃不良など口腔内に原因があります。副鼻腔炎(蓄膿症)、扁桃腺炎などの鼻咽喉疾患や胃酸の逆流による口腔粘膜障害でも口臭は発生しますが、かなり低率です。実際のところ口臭が胃腸障害のサインになることはほとんどありません。
口臭の治療はもちろん口臭物質の発生源となる口腔内の不潔状態を改善することです。歯ブラシやデンタルフロスを用いて口腔清掃を行い、場合によっては舌ブラシを使って舌清掃を行うことが大切です。(歯ブラシで舌を磨くと舌の組織が傷んで逆効果の場合があるので気をつけてください。)また何気なく服用している高血圧の薬や、睡眠剤に唾液分泌量を低下させる副作用を持っている場合もあるので要注意です。
実際に口臭はないものの、自分は「口臭があるのでは」と悩み、日常生活や対人関係に障害をきたしている仮性口臭症や口臭恐怖症という場合もあります。
口臭発生防止の特効薬はありません。子供の頃から教わってきた通り、ちゃんと食後に歯磨きをするしかないようですね。

 

(第14話) 低GI って何???

最近CMで低GIという言葉を耳にします。 「大豆だから低GI~」
少し前に低インスリンダイエットがブームになりました。食事を制限するのではなく、食事の質を変えることでダイエットしようという方法です。食事はその内容により血糖値の上がり方が違い、血糖値の上がりやすい食事をとるとそれを下げるために多くのインスリンが分泌されます。しかし、インスリンには脂肪合成能力もあるのでインスリンが多く分泌されれば脂肪もたくさん貯まってしまう。それならば血糖値の上がりにくい食事をとればダイエットにつながるのではないかという理論です。そこでこの理論を説明するのにGI(グリセミック・インデックス)という指標が出てきます。GIとは「ブドウ糖と比較してどのくらい血糖値を上げやすいか」を数値化したものです。GIが低ければ血糖値は上がりにくくインスリン分泌も抑えられ、インスリン分泌が抑えられれば脂肪も蓄積しにくいということになるので低GIはダイエットにつながるという説明です。低GI、低インスリンダイエットなどと難しい言葉で言われると、なんとなく効果がありそうですね。しかし、事実の一部分を誇張しているだけなのであまり効果は期待できません。100グラムのポテトチップスと100グラムのゆでたジャガイモのどちらが太ると思いますか。低GIだけでいくとポテトチップスのGI値は60、ゆでたジャガイモのGI値は90です。普通に考えてもポテトチップスの方がゆでたジャガイモより太りにくいとは思いませんよね。ここには大事な忘れものがあります。それはカロリーです。100グラムのポテトチップスのカロリーは554キロカロリー、100グラムのゆでたジャガイモのカロリーは76キロカロリーです。カロリーの高いポテトチップスの方がゆでたジャガイモより太りにくいはずはありませんよね。低GIだけではダイエットに有効ではないということが分かっていただけたと思います。やはりなかなか楽にできるダイエット法はありません。

 

(第13話) 果物のすすめ

日本人の果物消費量は年間一人あたり約45kgで地中海沿岸の国々の半分以下と少なく、世界で最低レベルです。果物は食物自給率の低さが問題視される日本において、数少ない高い自給率を維持している食物なのにどうして積極的に食べないのでしょうか。おそらくは、果物は「糖分が多くて高カロリーなので肥満の原因となり、ダイエットの敵である」「糖尿病や高脂血症を悪化させる原因となる」と思っているからではないでしょうか。
しかし、これらは大きな勘違いです。果物は水菓子と言われるように80%以上は水です。そして糖質以外にビタミン、カロチノイド、ミネラル、食物繊維が豊富で脂質は1%以下(アボガドは例外として脂質が多い)というすばらしい健康食品です。
実際、各食品100gあたりのカロリーkcal(脂質、炭水化物%)を比較してみると
イチゴ34(0.1、8.5)桃40(0.1、10.2)みかん45(0.1、11.5)りんご54(0.1、14.6)ごはん168(0.3、37.1)食パン264(4.4、46.7)ショートケーキ344(14.0、47.1)かりんとう476(20.6、71.3)ポテトチップス554(35.2、54.7)であり、果物のカロリーと脂質がかなり低いことが分かっていただけたと思います。
それでは糖質はどうなのでしょうか。
食品中の炭水化物が消化されると、最終的にブドウ糖、ガラクトース、マンノース、果糖という糖質に分解され体内に吸収されます。上記のデータの通り、決して糖質の元になる炭水化物は多くありません。果物は果糖(フルクトース)を多く含みますが、果糖はあらゆる糖質の中でもっとも甘くブドウ糖の倍以上の甘さです。そしてこの甘さゆえに「糖分が多く、高カロリー」というイメージが浸透しているのだと思われます。ただし、果糖がブドウ糖より中性脂肪に変わりやすいことを証明した実験もあり、一日総摂取カロリーの20%以上を果糖で補充すると中性脂肪の値が上昇するといわれています。これは一日に1800kcal摂取する人ならば、一日にみかん2kg、約20個を食べることになります。これほどの量の果物を食べる人がいるとは思いませんが、食べすぎることさえなければ「果物は金」となります。
これからは果物に対する誤解をといて、もっと多くの果物を上手に摂取しましょう。

 

(第12話) 正しいダイエット法

世の中には数多くのダイエット法が存在し、皆様も一度は試したことがあるのではないでしょうか。しかし、予想通りの効果は得られましたか。ダイエットには大原則があり、この原則に従わないダイエット法は必ずリバウンドします。その原則を理解するためには、人間が進化を繰り返して現在の状態となった動物であることを思い出さなくてはなりません。動物は、不安定な野生の状態の中で飢餓状態を乗り切って自分自身の生命を維持し、種を保存してきました。激変する環境の変化の中で安定的に食料を入手することは困難であり、しばらく食料を得ることができなくても生命を維持できる体内備蓄システムを持つことが生き残りの絶対条件でした。食料がたくさんある時に余ったエネルギーを貯蔵するシステム、それが脂肪組織なのです。ダイエットと称して、必要なカロリーを摂取しない状態が続くと、身体は「飢餓状態」を認識し、エネルギーが摂取できる時にできるだけ貯蔵しておこうと脂肪組織が反応します。同時に、「飢餓状態」は生命維持のために必要カロリーを最小限に制限しようと、カロリー消費の多い筋肉組織のうちの使用しない筋肉を萎縮させてエネルギーの節約を始めます。そして削られた筋肉は不足したエネルギーを補充するために利用されます。食べないだけのダイエット法は、脂肪を減らすどころかカロリーをたくさん消費してくれる筋肉を減らす結果になります。すなわち、基礎代謝量が減り、脂肪を貯えやすくやせにくい身体になって、リバウンドしやすくなります。
それではどうすればリバウンドしないダイエットができるのでしょうか。
その原則は、身体にあまり「飢餓状態」を感じさせずに摂取エネルギーを減らすこと、そして筋肉量を減らさないように運動をして脂肪組織のみを減らし続けることです。身体に強い「飢餓状態」を感じさせないためには一日のカロリー制限をあまり厳しくせず、食事回数を一日一食や二食にして食事間隔を広げないことが必要です。(食事間隔が広くなると身体は「飢餓状態」を認識するので一日三食食べることは大切です。)
ダイエットの大原則を分かっていただけましたか。頭で理解できても実行が難しいのは変わりませんのであしからず。

 

(第11話) 高血圧のお話(その4)

今回は高血圧の予防についてお話しましょう。
○「精神的ストレスを回避し、ストレスをためないようにする」  趣味や運動などで気分転換をはかりストレスを上手に解消する工夫をしましょう。他人と比較せずマイペースを心がけくよくよしないようにしましょう。
○「急激な温度差を作らないように工夫する」  入浴時の脱衣所や夜間のトイレなどで急激な寒さに当たらないように注意しましょう。
○「適度な運動を行う」  週に2、3日、1日30分から1時間程度の無理のない運動を継続しましょう。目安は個人の運動能力の50%程度です。
○「日常生活を規則正しく過ごす」  過労や徹夜などは避けて規則正しい生活を送りましょう。
○「アルコールはほどほどにたしなむ」  適量のアルコールは薬になります。目安は日本酒なら2合まで、ビールなら大瓶1本半、ウイスキーならダブルで2杯まで。週に2回の休肝日を作りましょう。
○「便秘を回避する」  便秘を治したら血圧も下がる場合がよくあります。
○「減塩を心がける」  日本人の平均塩分摂取量は12.9gです。南太平洋の高血圧のない原住民は1.4gしか塩分を摂取しておらず、塩分が高血圧に大きな影響を与えていることは明らかです。塩の変わりにポン酢を使ったり、しょうゆをかけるのではなく、つけるようにして減塩の工夫をしましょう。塩分摂取量は血圧が正常の人なら10g、高血圧のある人なら6gを目標にしましょう。
○「肥満を解消する」  肥満はインスリンの反応を悪くするだけでなく心臓の負担も大きくします。
○「バランスのとれた食生活を送る」  タンパク質は血管に必要なアミノ酸を補給し、自律神経を鎮め、血圧を下げる作用があります。特に魚のタンパク質には硫黄分が多く含まれており、より効果的です。カルシウムや野菜・果物に多く含まれるカリウムはナトリウムを尿中に排泄する働きがあり、血圧低下に貢献します。食物繊維は便秘の予防だけでなく体内の余分な塩分やコレステロールの排泄を促します。魚、植物に含まれる脂肪酸はコレステロールを低下させ、血管の栄養となります。
○「禁煙、節煙につとめる」  百害あって一利なしです。
敵を知れば戦い方は明らかですね。ちょっとした心がけで不必要な薬を避けることができるかもしれませんよ。

 

(第10話) 高血圧のお話(その3)

血圧は一日を通して常に変動しています。そして健康状態、心理状態、姿勢、時間帯によっても大きく変化します。血圧を変化させることで身体の全ての機能がバランスよく最適に働くよう自動的に調節されているからです。たとえば寝ていた姿勢から急に起き上がると血液は重力に従って脚のほうへ一斉に移動しようとします。このままでは十分な血液が頭に送られなくなるので自動的に身体の抵抗血管(末梢抵抗)をしめつけて頭にも血液がゆきわたるように調節します。
血圧は主に次の3つのシステムによって自動調節されています。
●(交感)神経の働きで抵抗血管を収縮(末梢抵抗を上昇)させたり、心臓の収縮力(心拍出量)を高めたりする。
●ホルモンの働きで抵抗血管を収縮(末梢抵抗を上昇)させる。
●腎臓の働きでナトリウム(Na)を体外に排泄させる。Naが多くなると、血管壁の細胞にNaが貯留し、Naが貯まった細胞は水分を細胞内へ引き込むので結果として血管壁が厚く(血管の内径が狭く)なります。また、Naの貯まった血管壁の細胞は温度変化、ストレス、興奮などの外的刺激に非常に敏感になって必要以上に血管壁を収縮させます。
具体的には、次のような場合に血圧が上昇します。
○怒り、興奮、緊張、不安などの精神的ストレス
○急激な温度変化
○急激な運動
 これらは交感神経を直接刺激することで血圧を上昇させます。
○疲労や睡眠不足
○お酒の飲みすぎ
 これらの状態では神経の自動調節能力が低下し交感神経が容易に刺激されるようになります。
○排便時のいきみ
 日本式トイレではしゃがみこむだけで血圧が上昇し、便秘で強くいきむとさらに血圧は高くなります。また、便秘そのものも血圧を高めることが証明されています。
○塩分の取りすぎ
 のどが渇いて、水分を多く取ることで血液量が多くなり、血管を押し広げて血圧が上昇します。また、腎臓で血液中の塩分(Na)をうまく排泄できなければ、先に述べた経路で血圧が上昇します。
○太りすぎ
 肥満になるとインスリンの反応性が悪くなり血液中のインスリン量が増加します。インスリンは末梢血管抵抗を上昇させるので、肥満になればインスリン量が増加し血圧が上昇することになります。
「血圧はどのような時に上昇するのか」を知れば高血圧も予防できますね。
次回はその予防法についてお話します。

 

(第9話) 健康食品

現代は、空前の健康食品ブームで、その内容は非常に多岐にわたり、各家庭に何かひとつは健康食品が置いてあると言われています。しかし、本当にその健康食品は効果があるのでしょうか?健康食品の誇大宣伝に踊らされて効果のないものを買っていないでしょうか?
よくある誤解を紹介しましょう。
「コラーゲンを摂取すると肌にはりがもどってくる」
人間が摂取したタンパク質は小腸で全てアミノ酸に分解され(消化され)、体内に取り込まれてエネルギーとして消耗されたり、必要なタンパク質に再合成されたりします。コラーゲンもタンパク質なので、お肉や大豆と同じように小腸で跡形もなくアミノ酸に分解されます。口から摂取したコラーゲンが、再び体内でコラーゲンとなって肌のはりに貢献する可能性はほとんどありません。
「アガリクスは癌に効く」
アガリクスにはβ-Dグルカンと呼ばれる多糖類が豊富に存在し、免疫力が高まると言われています。しかし、β-Dグルカンはあらゆるキノコ類に含まれており、アガリクスだけが他のキノコ類より特別豊富に含んでいることは証明されておりません。また、基礎研究でβ-Dグルカンの抗腫瘍効果の可能性を示しているものの、癌に効いたことを科学的に証明した研究はありません。
「プロポリスは身体によい」
プロポリスは数種の有効成分から構成される複合系サプリメントの代表です。ポプラやユーカリなどの樹液とミツバチ自身が分泌する体液とのヤニ状の混合物です。抗菌、消炎、鎮痛、免疫力増強、抗酸化などの作用が基礎研究で多数証明されており、なるほど身体に良さそうです。しかし、大事な情報が忘れられています。それは、ミツバチがどの地域で、どの植物を利用してプロポリスを作ったかによって全く組成が変わることです。ある産地のプロポリスはよく効くが、別の産地のものは全く効かないということがでてきてもおかしくないのです。
根拠の乏しい健康食品に多くの費用をつかうぐらいなら、おいしいものを食べてニコニコ過ごす方が健康には良いかもしれませんね。

 

(第8話) 高血圧のお話(その2)

高血圧の原因は何でしょう。原因がはっきりしている高血圧は二次性高血圧と呼ばれ、日本人の高血圧症の約10%を占めています。腎臓また腎臓血管の障害が原因の腎性高血圧、アドレナリンやアルドステロンなどのホルモンの過剰分泌が原因の内分泌性高血圧、経口避妊薬などの薬物が原因の薬物性高血圧がこれにあてはまります。残りの90%は遺伝体質と環境要因の両者が関係した原因のはっきりしない高血圧で本態性高血圧と呼ばれます。二次性高血圧は、原因となる病気を治療すれば高血圧が改善されます。それでは原因がはっきりしない本態性高血圧は治療できないのでしょうか?いいえ、原因が分からなくても高血圧が起こるメカニズムは流体の物理学的理論に基づいて解明されておりちゃんと治療できます。
具体的には、次の5つの因子が血圧に影響を及ぼします。
1 動脈壁の弾性  動脈壁が柔らかく、弾性に富むことは血液を貯めこむ能力が大きいことを意味し、収縮期の血圧の上昇は緩和され拡張期の急激な血圧降下が妨げられます。
2 末梢抵抗  大動脈と毛細血管の間には「細動脈」と呼ばれる血管があり、平滑筋が発達していて内径が調節できるようになっております。「細動脈」は抵抗血管とも呼ばれ、交感神経の指令を受けて内径を変化させ血圧を調節します。この血管の内径が10%減少すると血圧は約1.5倍に(100mmHgの血圧は150mmHgに)上昇します。
3 循環血液量  循環血液量が増加すれば血管内に、より多くの血液が充満することになるので、収縮期、拡張期ともに血圧が上昇します。
4 心拍出量  心拍出量は一回拍出量×心拍数です。一回拍出量の増加は循環血液量の増加(上述の3)とほぼ同じです。心拍数の増加は、拡張期の時間を短縮させ、血管の弾性復元が十分進行しないうちに次の拍出が行なわれることになって収縮期、拡張期ともに血圧を上昇させます。
5 血液の粘性  血液がねばくなると、血管壁に対する摩擦として作用し、血流に対する抵抗となります。すなわち粘性の高い血液を送り出すには高い血圧が必要となります。
本態性高血圧はこれら5つの因子が組み合わさって発症しているので、治療にはどの因子の影響を強く受けているのかを判断することが大切になります。
少し難しいお話になりましたが次回は実例をまじえてご説明します。

 

(第7話) 高血圧のお話(その1)

あなたのまわりには「血圧が高くて治療を受けている」という人がたくさんいるのではないでしょうか。実際、高血圧で治療を受けている人は年々増加しております。しかし、血圧がなぜ高くなるのか、高血圧の何が恐いのかをちゃんと説明できる人は少ないと思います。そこで高血圧についてできるだけ分かりやすくお話したいと考えております。何事も、敵を知って戦う(予防、治療する)ことが大切です。
今回は「血圧とは何か」からお話しましょう。
身体の機能を正常に発揮させるためにはあらゆる臓器組織に必要十分量の栄養や酸素を送り込む必要があります。その運搬役が血液であり、心臓のポンプ機能で送り出され、血管の中を通って臓器組織に到達します。血圧とは血液の流れ(血流)によって血管の壁が押される圧力のことをいい、管内を流体が流れる時の一般的な物理学的理論が血圧にもあてはまります。
血圧が120/80mmHgのように表記されることはご存知ですね。この120mmHgが血管にかかる最大血圧をあらわし、80mmHgが最小血圧をあらわしております。当然のことながら血液循環の力源である心臓が一気に収縮して血液を押し出した時に、最大血圧(収縮期血圧ともいう)となり、心臓が血液を出し切って逆流防止の弁が閉じた時に最小血圧となります。(この時、次の血液を送り出す準備として、心臓が血液を貯め込みながら拡張するので拡張期血圧ともいいます。)心臓で血液を出し切った直後の圧は0mmHgとなりそうですが、実際の血圧を測定すると最小血圧の80mmHgを示しています。これは心臓から一気に送られてきた血液を血管が柔軟に受け止めて一旦血液を貯め込み、心臓からの血液供給がなくなった時点でも徐々に血液を送り続けているからです。ここまでのお話でも血管の柔軟性が血圧に大きな影響を与えることが想像できるでしょう。しかし、高血圧の理由はもっと複雑です。続きは(その2)でお話します。

 

(第6話) EPAとDHA

これは何の略かご存知ですか。最近、非常に注目されている二つの栄養成分ですね。EPAはエイコサペンタエン酸、DHAはドコサヘキサエン酸の略で、食品の脂質中に含まれる脂肪酸の一種です。ただしどちらも体内で合成することができず、食品として外部から取り込むしかない必須脂肪酸と呼ばれるものです。そのためにEPAとDHAが多く含まれるお魚(「おさかな天国」という歌がスーパーの鮮魚売り場に流れていますね)が注目され、EPAとDHAに変換できるリノレン酸を配合した植物油が推奨されているのです。では、EPAとDHAにはどのような働きがあるのでしょう。
EPAの働きには、血栓を作りにくくする、血中コレステロールを低下させる、動脈硬化を防止する、血圧上昇を抑制する、炎症を抑える、免疫能を高める、癌の発症を抑えるなどが報告されております。この発見には、魚やアザラシ(のEPA)を多く摂取するイヌイットが欧米人より心筋梗塞、乾癬症、気管支喘息になりにくいことから注目されました。
DHAについては、体内でDHAが特に集中している部位を調べた結果、網膜と大脳であることが分かり、眼や脳の働きに必要なものではないかと予想され、その重要性が証明されました。日本人の子供が欧米人の子供と比較して知能が高いのはDHAのおかげではないかと言われています。
これまで肉食に偏りがちであった人は、しばらく「お魚」を見直してください。今まで何をしてもよくならなかった体の不調が、お薬なしで良くなるかもしれません。

 

(第5話) トクホ

最近CMでよく耳にする「トクホ」とは何の略かご存知ですか?それは特定保健用食品を略した言葉です。では、「いわゆる健康食品」と「特定保健用食品(トクホ)」とはどう違うのでしょうか。
「トクホ」とは、厚生労働省が食品衛生法によって、氾濫する「健康食品」の中から、効果が期待できるものにお墨付きを与えた食品群です。
国が定めた一定の要件を満たす(健康)食品は、保健機能食品と呼ばれ、「トクホ」と栄養機能食品に分類されます。「トクホ」は、その食品や成分の有効性が、科学的に立証されており、普遍的な効果が認められる食品で、栄養機能食品は、厚生労働省の規格基準を満たしてはいるものの、科学的な証明には達しない、企業が自社の責任においてその有効性を証明している食品です。どちらも健康食品の広告によく見られる「みるみる痛みがなくなった」というような体験談だけでは認定を受けることができません。
現在「トクホ」で認められている保健用途は、下記のようなものです。
○お腹の調子を整える
○血圧が高めの人に
○コレステロールが高めの人に
○血糖値が気になる人に
○体脂肪が気になる人に
○ミネラルの吸収を助ける
○虫歯の原因になりにくい
まわりくどい表現ですが、「トクホ」は薬ではないので、病気に対する効果を表示できずこのような言い回しとなります。
「トクホ」の認定を受けるのは、大変な作業なので、認定のない健康食品の中にも優れた食品があるかもしれません。しかし、「トクホ」は安全性と有益性を証明する判断材料の一つにはなるので上手に活用して健康的な生活を送りましょう。

 

(第4話) アルカリ性食品

私が学生の頃、 母に「アルカリ性食品を食べて、身体をアルカリ性にすると健康にいいんだよ」と教わり、海藻やきのこ類やにんじん・キャベツを積極的に食べさせられた記憶があります。当時は、健康食品=アルカリ性食品の勢いで宣伝をされておりました。しかしいつの頃からか、アルカリ性食品ブームは世の中から姿を消しました。その理由は、いくらアルカリ性食品を摂取しても腎臓の働きで酸とアルカリのバランスが保たれ、結局身体はアルカリ性には傾かないということのようです。では本当にアルカリ性食品は健康に有益ではないのでしょうか。
腎臓で酸とアルカリのバランスを調節しているとお話しましたが、アルカリ性食品を摂取すると尿がアルカリ性に傾きます。このアルカリ性尿は、尿酸のスムーズな体外への排出と尿酸が結石となることを防止します。こうして足の指に尿酸の結晶が蓄積する「痛風」やその尿酸によって酸性化した尿が作り出す「尿路結石」を予防してくれます。どちらも激痛を起こす病気の代表選手で、救急病院受診理由の上位に位置しております。
ところで、尿路結石の人が、「ビールでも飲んでしっかりと尿を出しなさいと先生に言われました」と話しているのをよく耳にします。これは、尿を十分に出すことで、結石を早く体外へ排出させましょうという意味です。ビールはその利尿作用から、たくさん尿をだす代名詞として使われております。尿路結石の8割はシュウ酸カルシウムでできています。ビールにはその結石のもととなるシュウ酸がたくさん含まれており腎臓でカルシウムと結合して結石になりやすくなります。くれぐれも間違った理解をして、痛い目にあわないようお気をつけください。

 

(第3話) しゃっくり

みなさんは、しゃっくりがなかなか止まらなくて困ったことがありませんか。しゃっくりは、横隔膜(胸と腹を隔てる筋肉)がケイレンすることによって起こります。その原因については胎児期の反射の名残であるという説が有力です。胎児は母体の羊水の中で成長します。その羊水中にある異物が鼻や喉にひっかかった時に、しゃっくりでその異物を除去していると考えられています。妊婦さんは胎児がしゃっくりしていることによく気づかれますし、赤ちゃんがしゃっくりするのをみなさんもよく見かけるでしょう。ギネスブックによると、しゃっくりの世界最長記録保持者は68年間もしゃっくりをしつづけたアメリカ人だそうです。しゃっくりを何時間続けても基本的に人体への影響はありません。しかし、眠れなかったり、食事が食べにくかったりすると衰弱が起こる可能性はあります。また、人前でいつまでもヒックヒックしていたり、大事なスピーチの直前などに突然はじまると困りますね。
では、しゃっくりを止めるにはどうすればよいのでしょう。みなさんは、次のような方法を試しているのではないでしょうか。
○ゆっくりと深く息をする。息を止める。
○背中をたたいてもらう。他人に脅かしてもらう。軽く胸をたたく。
○水を一気に飲む。下を向いて水を飲み込む。上を向いて口を開けて水を飲み込む。コップの手前ではなく、反対側から水を飲む。割り箸でコップを十文字に区切り、それぞれから水を飲む。
○レモンの果汁、砂糖、柿のヘタなどを飲んだり食べたりする。
他にも色々ありますが、私が救急病院の勤務医時代に実践していた、薬を使わない解決方法をご紹介します。
◎こよりを鼻に突っ込んでくしゃみをする。
◎乾いたガーゼで30秒くらい舌を引っぱる。
◎眼を閉じて軽くこする。(決して強くこすってはダメです。)
はじめの2つは、私が経験的に有効と考えている方法です。最後の一つは、迷走神経反射という人間の自然に備わった力を利用した方法です。みなさんも今までやってきた方法で効果がない時に一度試してみてください。
ただし、いくら頑張っても止まらないしゃっくりや止まってもすぐに繰り返すしゃっくりは脳・神経の病気や内臓疾患が原因のこともあるので病院でみてもらうようにしてください。

 

(第2話) 静電気

エレベーターのスイッチや自動車に触ると「バチッ」という音とともに指先にイヤな衝撃を感じることがありますね。ご存知の通り静電気のしわざです。静電気は気温と湿度が低くなる冬場に発生しやすく、金属と関係のない人間同士が触れ合う時にも容赦なく襲ってきます。しかし、この静電気をうまく利用した文明の利器もあります。それは空気清浄器です。手術室や食品製造工場などの厳密な無菌空間が必要とされる場所でも大活躍しています。空気清浄器の中にあるフィルターは大きな粒子をふるいにかけて除去するだけでなく、そのフィルターに静電気を発生させることでフィルターの網目をくぐりぬける小さな花粉や微生物までも吸着し除去してしまうことができるのです。おっと、そこで何かお気づきになったことはありませんか。静電気が花粉をひきつけるのなら、たびたび「バチッ」と静電気を感じる人は花粉やハウスダストなどをひきつけて花粉症やアレルギーを悪化させているのではないかという疑問です。しかし、この疑問については今のところまだはっきりと結論はでておりません。それでは、静電気を防止するにはどうすればよいのでしょうか。とっても簡単な方法をご紹介しましょう。水を入れた携帯用のスプレーボトルを持ち歩くことです。この水を、外出の時々にシュッと靴のつま先に吹きかけることで静電気が一気に地面へと放電されます。「バチッ」というイヤな衝撃も花粉吸着の恐ろしさも、これさえあれば安心です。

 

(第1話) 正しいうがい

冬場は空気が乾燥しているため気道の粘膜が傷んで風邪をひきやすくなります。特に、2月から3月にかけてはインフルエンザが流行する時期でもあります。そこで一番簡単で有効な予防策は「うがい」です。しかし、みなさまは正しいうがいの方法をご存知ですか?お湯を使って、ゴロゴロと音だけ鳴らしていませんか?風邪をひきにくくする正しいうがいの方法をご紹介いたします。
○ よく冷やした緑茶(氷を入れてもよい)をコップ1杯準備する。
○ 口に緑茶を含む。
○ 指で鼻をつまんで勢いよくゴロゴロと緑茶を撹拌する。
   以上です。
このうがいには3つのポイントがあります。
◎ 緑茶には強力な殺菌効果があります。
◎ 冷たい緑茶で一時的に冷やされた気道粘膜は、その後反動で一気に血流が改善し、粘膜の修復能力と抗菌力が上がります。
◎ 鼻をつまむことで鼻腔から侵入する空気がなくなり、口の奥で循環していたうがい液が、鼻腔にまで届くようになって、広い範囲の消炎と洗浄ができます。
  お手軽で、効果的な方法なので一度お試しください。